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【FF7 ヴィンセント BL】神の食べ物

第1章 1


「…大漁じゃん」
両手が塞がっているので、ドアノブを肘で押し下げた後はそのまま背中で扉を押して入って来たリオが、テーブルに積まれたチョコレートの山をじろり、と見て言った。
先に部屋に戻っていたヴィンセントは、テーブルが使えないのでベッドに腰掛け、椅子を移動してテーブル代わりに、銃の手入れをしていたようだ。
「…おまえも」
やや不機嫌さを滲ませたリオの声に顔を上げ、僅かに首を傾げて応じた。
そうだけど、と口には出さずにリオは思い、他にスペースも無いのでベッドへ行き、これまた抱えていたチョコレートの山をどさりと置いた。自分はその山とヴィンセントとの間に座る。
ヴィンセントは素早く銃を組み立て終えると、リオに向き直った。
「…日頃世話になっているからと、エアリスやティファ達がくれたものだ。私はその…あまり興味が無いが、おまえと…食べるかもしれないと、思って…」
ヴィンセントは言葉を選びながら、少し困っているようだ。
仲間たち(正確には、数日滞在しているこの街の住人の女性たちや宿屋のおかみなども含まれているが)から貰ったバレンタインのチョコレートに、リオが不機嫌になるとは予想していなかったのだ。
「その…義理チョコに過ぎないが、…邪魔なようならば、返して来ようか、」
次第にぽそぽそと、なぜか謝罪するような内容になってきた台詞に、リオはとうとう吹き出した。
「べつに、怒ってないって!」
「………そうか…、」
可笑しそうに笑っているリオの様子に、ヴィンセントはほっとした。
「なんかさ、ちょっと…妬いただけ」
視線だけで問うヴィンセントから、テーブルのチョコへと目線を逃がした。
「んー…ヴィンセントを独り占めしていたいっていう恋人的な気持ちと、モテモテのヴィンセントが羨ましいっていう男としての気持ちが、混ざり合った、かな…たぶん」
ヴィンセントはふっと笑みを零し、リオを背中から抱きしめた。
こんな風に素直に心の内を伝えてくる少年を、自分がどれほど愛おしく感じているか、彼は知らないだろう。
リオがいつも自分に好意を伝えてくれることに安堵しながら、それが永遠であることを願っている。
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