【YOI・男主×ユーリ】扉の向こうとこちらのエロス
第2章 Tokyo's Night
(誘ってきたのはそっちじゃないか。なのにいざ事に及ぼうとした瞬間、その態度はあんまりじゃない?僕が今夜ここに留まるまでどれ程悩んで決心したか、君は本当に判ってるの!?)
口には出さず心中でのみ叫んだ自分を、礼之は褒めてやりたかった。
「…だから、さっき準備したでしょう?優しくするから」
「嫌だ!無理、出来ない、怖い!」
業を煮やした礼之がユーリの上にのしかかろうとすると、最早虚勢を張る事も出来ないユーリの口から悲鳴が上がった。
「放せ!礼之、嫌だっ、やだあああっ!」
暴れるユーリの足を掴んで少々強引に開かせようとするも、シーツに顔を押し付けたユーリの「助けて、じいちゃん…」というか細い泣き声に、礼之は大きな溜息を1つ吐きながら、その身を起こすとユーリから離れた。
何だかんだいって、礼之はユーリの事を大切にしたいのだ。
ここまで怯えて泣いている姿を見せられては、これ以上無体な真似は出来ない。
かといって、この滾りまくった下半身の熱をどうしようかと思案していると、ふと礼之の視線の先にある扉が映った。
次いで部屋の周囲を見回すと、ベッドを下りてバスタオルを腰に巻く。
「礼之…?」
自分から離れた礼之に気付いたユーリは、ベッドから身体を起こすと涙で濡れた瞳を向けてくる。
「入口近くのバスルームを借りるよ。メインの浴室は別にあるから、僕があそこで籠ってても問題ないよね」
そのまま目的のバスルームに向かう礼之を、ユーリは慌てて追いかける。
「疲れたなら寝てていいから。僕が出てくるまでは絶対にこっちに来ちゃダメだよ。もしも近くにいるのが判ったら…今度こそユリがどんなに泣いたって勘弁しないからね」
「礼之…ゴメン。俺、自分から誘っときながら、お前にこんな惨めな想いさせちまって…」
礼之の大好きな白樺の若葉の色によく似たユーリの瞳から、新たな涙が零れ落ちていく。
一瞬だけ彼に近づいて、その雫を舐め取りたい衝動に駆られた礼之だったが、
「有難う。そのひと言だけで大分救われたよ」
今触れてしまったら自分を抑える自信がなかった礼之は、出来るだけ平常心を心掛けた笑みを作ると、バスルームの扉を閉めた。