第14章 -衝撃
ベッドにセレネを寝かせているルイにレオが問いかけた
「…ルイは、こうなる事 分かってたの?…」
セレネが錯乱状態になった時 ただ一人ルイだけが冷静だったから
「…何となく。…セレネを見つけた時は、もっと酷かったから…」
「もっとって!」
「…アラン、声…」
「っ…。わるい…」
「確実にこうなるって、分かってた訳じゃない。…ただ、可能があるとは、思ってた。あの時…錯乱状態で意識失ったから。」
「……。」
見つけた時のセレネは、周りが全く見えていなかった。
触るもの全てが あの男だと感じ 取り乱し ガクガク震え 暴れていた。
殴られ 目隠しをされ 手を縛られ 口に布を詰められ
あんな事をされたのだ 仕方ない…
すぐに目隠しを外さなかったのも あの場の光景を見せないためだ。見ていたら あの男の顔を脳裏に媚びりつけていたかもしれない。それを思ったら あそこから出て 目隠しをとるのが 一番いいと思った…
あんな事 思い出して欲しくない セレネの中にあの男の一片でも残るのがルイは、たまらなく嫌だった。
苦痛な記憶などなくなって欲しいとさえ思っていた
「ジル、シュタインにセレネのこと知らせて。俺は、さっきの片付けるから。 レオとアランセレネを見てて…目を覚まさないと思うけど さっきの約束は、守って…」
そう言うと ジルと共に部屋を出た…
「…ルイに気、使わせちゃったね。」
「……。こいつ、さっき『おにぃちゃま』って…」
「…うん…。記憶、戻ったのかな…。」
「皮肉だな…こんな事で戻るなんて…。」
ベッドの両脇に分かれているレオとアラン。
二人ともそっと寝ているセレネの手を握った。
「ちっせー手…」
「こんなに 腕、細かったっけ?…」
「セレネがちっこいのは昔からだ…」
「…手の大きさ比べてさ、『小さい』って言うと、怒ってたよね…」
「昔から全部ちんまくて、…母さん心配してたしな…」
「そうだったね…小さくて可愛いくて…前から自慢の妹だった。」
ルイが作ってくれた 初めての兄弟水入らずの時間…
静けさが響く部屋で 小さな 寝息をたてる 華奢な最愛の妹の痛々しい姿。
二人は、寝ているセレネに話しかけるように静かに昔の話をした。