第13章 -悪循環 [R-18]
馬の上で 彼女の大きな目に巻き付けられた布を取った。
どれだけ泣いたのだろう… 気を失っても尚 ボロボロ涙が零れてきている。
セレネをしっかり抱きとめ 落とさないよう 気をつけながら 少し足早に馬を走らせた。
途中 何度もセレネを確認しながら…。
屋敷について 自室のベッドに彼女を寝かせた。
縛られた手を解くと少し切れていた。
頬を殴られたのか 赤く腫れていて 血が滲んでいた。
伏せられ頬に影を作っている長い睫毛 、その目尻からは、涙が滲んでいて 親指で拭った。
手当をし シーツをかけ セレネの手をそっと握ると
まだ微かに震えている…
どれだけ怖い思いをしたんだろう…。
もし、俺が間に合わなかったら…
気が付かず 通り過ぎていたら…
セレネの馬もネックレスも知らなかったら…
考えただけで吐き気がする。
でも、彼女は…セレネは、比べ物にならない程 怖い思いをしたんだ。
胸の奥がギュゥと鷲掴みされ潰されたように 傷んだ。
窓の外から 蹄の音が幾つも聞こえる。
アラン達だろう。
セレネの手をシーツの中にそっと戻すと
メイドに彼女が起きたらすぐ伝えるよう セレネの傍にいさせた。
前髪を指の甲で払い もう一度 目尻の涙を拭い 部屋を後にした。
「ルイ!あいつはっ?!」
「ハワード卿!!!」
「ルイっ!」
アランたちのところに行こうとしたら 屋敷のものに聞いたのか 三人が駆け上がってきた。
ルイを見るなり 三人 詰め寄り ハァハァと息をしながら 声を荒らげた。
「……。ここだとセレネに聞こえる…。」
近くの部屋に通した。
ジルもレオもアランも焦ってるのが伺え アランに関しては、イラついていた。
この状態の三人をセレネに 会わせるわけには、行かない。
意識を失ったといえど あれだけ怖い目にあったのだ。
怯えるはずだ。
会わせるにして 落ち着いてからじゃないと無理だと思ったからだ。
ジルとレオが付いてきて アランもしぶしぶという感じだが 部屋に入った。
聞かれては、不味い話だろう。人払いもして…
「…座って…」
「「……。」」
「そんなことより、あいつはっ!」