第10章 -お披露目パーティー
「今日 ウィスタリアにお泊まりになるって聞きました。
…お忙しいのに 時間を取って下さって嬉しい…」
「…他の誰でもない。お前の晴れの舞台だからな。
一緒にいられる時間は、少しでも長いほうがいい。」
「…はい。」
華麗に踊るゼノとセレネの姿に周りからは、「お似合いだ」という声が上がっていた。
曲が終わり 身体を離すも 寂しさが募る。
目を伏せ 少し俯きながら 挨拶をした。
(…ずっと お兄様と踊ってるわけには、行かないものね…。)
セレネのそんな気持ちを見透かしてるかのように ゼノは、スっとセレネの前に手を出した。
出された手をジッと見つめ ゼノの顔を見上げると 目を細め優しく微笑んでいた。
(…あ、エスコートしてく下さるんだ。)
そっと手を乗せると 力強くでも優しく握られた手が痺れるのを感じた。
「セレネ様お疲れ様でした。」
パーティーが終わり湯浴みをし私室に入ると ユーリが紅茶をコポコポと湯気をたてながら入れてくれていた。
ソファーに座ると紅茶をサーブしてくれるユーリ。
「ユーリもお疲れ様でした。ありがとう」
ゆらゆら湯気の立つカップを覗き込むと…
「…これ…バタフライピー?」
驚いてユーリを見上げるとニッコリと笑っていた。
「ゼノ様が用意してくれてたんだ。セレネ様の好きな紅茶と一緒にね。」
「えっ!…嬉しい…」
シュタインで愛飲していた バタフライピー。簡単に手に入るものではなかったので諦めていた。
濃く入れればブルーブラックに淡く入れればブルーに。
好きな紅茶にお花を浮かべ よく飲んでいた。一口コクリと飲む。
「…甘い…リコリスの甘さね…。」
「流石だね。今日は、一段と疲れてるだろうから 落ち着きのカラーと優しい甘さのリコリスにしたんだ。」
お兄様の事だ きっと何種類か持ってきてくれているのだろう。
心遣いが嬉しくて頬が綻ぶ。
「クスッ…いい笑顔。今日のパーティー ジル様も大満足だったんだね。」
「ふふっ…随分褒めてくださったわ。」
ニッコリと微笑みあい 横目で時計を確認すると ユーリが時間だから行くよ。と当然 ガウンを私に羽織らせ 廊下を確認し 部屋を出た。