第5章 -決意
今 前に座る プリンセスになったばかりの女性は、自分達の妹で間違いないだろう。
それは、壇上で彼女が見せたものであり クロフォード家の血が見せたものでもあった。
これを知るのは、今では、アランとレオだけだったが
壇上での出来事 ルイやジルは、気がついたかもしれない。
先程 中庭で見た彼女は、可愛らしく何処かフワフワしていた女の子だったが
今、椅子に座るのは、紛れも無く女性だった。
それは、セレネの丁寧な仕草や立ち振る舞いからなのか
一つ一つ魅せる動きから放たれるオーラの様なものからなのだろう。
選考会が終わり 帰る前に声を掛けてくる人、一人一人に挨拶し
丁寧に対応していた。
一旦は、止めようと思ったのだが セレネにそっと後ろ手に合図を送られ 辞めた。
彼女が出したものは、「大丈夫です。」と言う合図だ。
しかも 気配を消し後ろに俺がいる事も気がついた上で…だ。
気配を消していたのにも関わらず 後ろにいることに気がつき 集中力が切れないよう話しかけず邪魔にならないように配慮していたのだ。庶民が出来ることじゃない。
(……セレネ…《今、ここに来るまでの間》…お前に何が起こったんだ…)
立ち振る舞いも見ていたが 今すぐプリンセスとして公務に出てもなんら問題は、無いだろう事も伺わせた。
暫くすると 広間での指示を終えたジルが相変わらずの微笑みとピシッとした姿勢でセレネに向かってきた。
「では、プリンセス 説明等致しますので執務室においでください。その後 貴女の私室にご案内致します。」
「はい。分かりました。」
ジルとセレネが歩いていく少し後ろをアランが歩いていく。
と、後からレオが追ってきた。
「こんにちは 可愛いプリンセス。」
そう言うとセレネの手を取り 甲にチュッと唇を寄せリップ音をたてた。
「俺は、レオ。仲良くしてね」
セレネは、少し驚いていたがジルがフォローする。
「プリンセス、彼は こう見えても一応 王宮官僚です。貴女の座学を担当致しますので覚えていてください。」
「あ、はい。セレネです。よろしくお願いします。」
「ちょっとジル 《一応》は、余計じゃない?どう見ても王宮官僚にしか見えないでしょ。」