第1章 -序章-
パチパチパチ…
ゴォー…ガッ…バキバキ…パリン……ガラガラ…
眼の前は、紅…
熱の臭いと木の焼ける匂いが鼻につく
人の叫ぶ声とものの壊れる音がやけに遠く聞こえる気がする
「うぇぇん!おかっ…ヒックちゃま…おとうっ…ウェ…たま…ヒック…」
「セレネ大丈夫!おにぃちゃまたちが守るから!」
「にぃちゃまから離れちゃダメだぞ!」
轟々と燃え盛る屋敷の中まだ、火がまわっていない場所で
幼い妹をそこまで年の違わぬ二人の兄が自身も怖さで足がすくむのにも関わらずギュッと抱きしめ守っていた。必ず助けが来るからと
「…はっ!いました!!!レオ様アラン様!セレネ様も!!!」
「レオ様アラン様、もう大丈夫です。」
「セレネ様怖かったですね…ここらから出ますよ」
セレネを抱き抱え 二人の兄もそれぞれ屋敷の者が連れ 火の手をかわしながら外に出た…はずだった…後から自分達を追い少し離れても 後から来るはずの妹と妹を抱いたはずの人がいない。
三人の両親は、この燃え盛る屋敷の中だ。
幼い妹を二人の兄に託し 「元気に幸せになるように」と「三人離れずお互いに助け合う」のだと言い残し 屋敷の中に残った…
いくら幼いとはいえ 聡明な双子
この炎の中残ればどうなるのかと言うことくらい分かっていた。
必死に泣きながら「逃げよう」と言っても 母は、微笑み首を振るだけだった。
背中を押され三つ近く年下の妹を守りながら 先程の場所まで逃げてきていた。
親から託された 可愛い妹。
おにぃちゃまとニコニコ笑いながらいつも後を追いかけてきていた。
アランと同じブルーブラックのふわふわの髪。
クリクリの目に真っ白の肌。
今も同じ様に自分達の後ろから来ているはずだった。
『守るから』そう言ったのに
守るはずの妹がいない………必死で辺りを捜索した。声が枯れるほど叫び探したが見つかることは無かった。
その後、この火事は、闇に伏せられるように表に出ることは無かった。妹…セレネは、行方知れずだったが二人の兄弟にとっての親の忘れ形見と言える大切な可愛い妹を探し続けた。