第7章 hands
「俺が…迎えに行けばそんなことには…っ」
「違う…っ、翔くんは悪くない…!」
「でも…っ!」
強まる腕の中で俺も強く抱きしめ返す
「悪いのは痴漢ヤローで…っ」
さっきの感覚が思い出されて少し身震いする
俺の気持ちを察してくれた翔くんが優しく頭を撫でながら声掛けてくれる
「辛かったな…」
「うん……辛かったし……怖かった……っ…」
恐怖感を消すかのように翔くんの腕の中で暫く体を預ける
翔くんの香り
翔くんの体温
翔くんの鼓動
それら全てが俺の心を軽くしてくれる
「かず…今日はもう休もうか?」
さっきまでとは違い、優しく背中をさすられたかと思うとスッと立ち上がり俺の手を引く
「え、なんで…まだ、そんな時間じゃないよ…?」
「かずが落ち着くまで…側にいるから、今日はもう、おやすみ…?」
そう言って寝室に連れられて優しくベッドに腰掛けさせてくれる
俺を思ってそうしてくれてるのはわかった
わかったけど…
「嫌だ…っ…痴漢ヤローの感覚が残ったままなんて嫌だ…っ…」
「かず……」
隣に腰掛ける翔くんに請う
「翔くんで…っ…体に残った感覚……消してよ…っ!」