第7章 hands
『まもなく〇〇駅、〇〇駅〜…扉は左側です…』
た、助かった…!
降りる駅のアナウンスが入ってしばらくして目の前の扉が開いて慌てて降りる
怖くて振り返れなかったけど、さっきの痴漢ヤローは車内に残っているのだろう
降りてからそいつは俺に近寄ってこないところを見るときっとそうだ
俺の横をすり抜けて乗り込んでいく人達
扉の閉まる音がして電車の遠ざかる音が聞こえる
やっと…痴漢から逃れられた…
安堵して改札に向かう人波の中俺は暫くホームに立ち尽くしていた
そのあと俺はどうやって翔くんちに着いたかはっきりしなかった
気づけば翔くんちの玄関にたどり着いていた
「かず…?」
俺の顔を心配そうに覗き込む恋人の顔に緊張が緩んで涙が滲んできた
「……えっ?どうしたの……?」
「翔……くん…っ」
胸元に飛び込んでしがみつく
感じた翔くんの香りに安堵してひたすら溢れる涙を流した