第7章 hands
平日の夕方、ということもあってか車内はだいぶ混雑していた
ちょうど帰宅ラッシュの時間帯だもんな
運悪く乗った時間帯が混雑していることもあって座れずじまい
扉のすぐそばに立って帽子を目深に被って目立たないようにしていた
少しあるスペースを利用してスマホを取り出し翔くんにLINEするとすぐに返事が返ってきた
『待ってる、早くおいで』
それを確認してポケットに戻すと急に来た大きな揺れに押し寄せる人の波
押されて扉に頬が触れる
「す、すみません…」
俺を押し付けるような形になってしまった背後のサラリーマン風の男性がわざわざ謝ってくれる
度のキツイ眼鏡なのだろうか
こんなに至近距離にいるというのに顔はハッキリとはわからないほどだった