第5章 教訓「口は災いの元」
「形になったよ?次は?」
心配(?)する俺をよそに次の段階を求めてくる
出来上がったパティを空気抜きして、あとは焼くだけの状態まで仕上がった
「あと焼き方もポイントがあるんだけど…それはこれ見ながらやって?」
ポケットからメモ帳を取り出し1枚破って焼き方のコツを走り書きして渡す
「わかった、ありがと〜松潤!」
「どういたしまして〜♪さ、俺は帰らないと…雅紀になにも言わずに帰っちゃったから心配してるといけないし…」
借り物のエプロンを大野さんに返し玄関へと向かう
履きにくい革靴を履くために靴べらを探すも見当たらない
俺の探す行動を見てて大野さんも探してくれるも見つからない
「…ごめん、俺んちじゃないからどこにしまってあるかわかんないや…」
ここ、カズんちだもんな…
なんとか履き終えて玄関のノブを握った時に思い出した大事なこと
「大野さん?楽屋でも言ったけど、カズには内緒にして驚かせた方が喜ぶと思うから絶対言うなよ?…オッケー?」
「うん、わかった〜」
俺の言葉に何1つ疑問を抱かずに返答してくる
カズの性格なら内緒にされた方が激怒するのは俺からしたら目に見えてるのに、目の前のニコニコしてるこの人はそこまでまだ気が回らないようだ
伏線として色々張っておいたしさっきの電話出なかったのも(偶然だけど)多分効果的には抜群だろう…
カズがどう反応したかあとで聞くのが楽しみだ♡
授業料はそれで我慢しといてやるよ♪
「松潤?どしたの、なんだか悪い顔してるけど…」
「あ、いやいや…なんにもない♪じゃ、俺は帰るね」
カズのマンションを後にしてタクシーに乗り込み、雅紀のマンションへと向かう
車内で雅紀にLINEするも既読も何もつかない
「あれ…今日はもう仕事入ってないはずだけどな…」
少し不思議に思いながらスマホを仕舞うと変わっていく外の街並みをぼんやりと見つめた
この時の俺はまさか、恋人が拗ねているとはこれっぽっちも思っていなかった