第28章 秋の夜長に春ひとつ
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「かずちゃん!起きてっ?」
「…ん、ん~……」
ゆらゆら揺れる感覚と
聞き慣れた声に意識が浮上する
うっすら目を開けるとそこには
お袋さんが覗き込んでいて
「…え、お袋さん…体、大丈夫なの…?」
「今日は調子良くって♪」
ほんとだ、よく見ると血色いい顔してる…
「それにしてもこんなとこで
雑魚寝なんて…風邪引いちゃうわよ?」
少し呆れ顔のお袋さんに手を引かれて
半身を起こす
昨日、あのあと結局客が来る気配なんて全くなくて
少し気まずさを感じながらも大野さんと談笑してたら眠たくなって
休憩に使ってたここに転がったのまでは覚えてるんだけど…
毛布、大野さんが掛けてくれたのかな…
毛布の半分に包まれて眠る大野さんはまだ
気持ち良さそうに眠ってた
「あ、そうよ!それより!
かずちゃん、外見て?」
「…外?」
「店の前にすごい列が出来てて…」
「え、ええっ??」
「見たこともない若い男の子ばっかりで…私怖くて…」
慌てふためくお袋さんの言葉に半信半疑
裏口からそっと回って
店の入り口の方をそっと覗きこむ
そこには紛れもなく店の前に並ぶ
お客さんの長い列ができていて
初めて見る光景にただ驚いて
一人一人の顔をじっと…見てみたら
列の中によく知る顔があった