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台風のちに快晴、そして虹 【気象系BL】

第28章 秋の夜長に春ひとつ



重い荷物をなんとか持って帰ると
大野さんがせっせと台拭きをしてて

「あ…!おかえりっ」
「…掃除、してくれたんすか?」
「あ、うん…待ってる間
 やれることないかな…って
 思ったら掃除しか思いつかなくて」

留守番中…掃除してくれたのか

そう言いながらまた作業台を
綺麗に吹き上げていく

そういや…
味の再現のことで頭いっぱいで
まともに掃除なんてしてなかった…

古い設備なりに清潔感は
あったのに…

俺なにやってたんだ…

店守りたいってんならまるごと…
やらなきゃいけなかったじゃねーかよ…

小さい頃から変わらない設備

昔ながらの木造平屋建て

年数経過でだんだん古くなる姿を見てきたけど
どんな時も…

綺麗だった店…なのに…

大事なこと…疎かにしてた

作業台を磨く大野さんの横に並んで
磨き上げていく

「よし、綺麗になった!」
「こんなに綺麗になるなんて…」

一緒に磨くとすぐ終わって
くすみがちだったシンクが光を放つ

「これからはまめに掃除、しますね…」
「そうだね、その方がいいね…」

俺を咎めるでもなく、そっと…
そう優しく声をかけてきた

…こんなに出来た人なのに…
なんで…襲われたりしたんだろ…

少し浮かせてる右足から
雅紀の言ってたことを思い出す

「ね、カレー作りはじめてもいい?」
「……」
「…?カズ?」
「あ…はい……?」
「カレー、作りはじめてもいい?
 あ!それとも…
 夜の営業終わってからの方がいい…?」
「…あー……いや、どうぞ…」

疑問からあまり回らない頭でそう答えると
買ってきた食材が目の前に広がっていった



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