第28章 秋の夜長に春ひとつ
「…ごめ…ホッとしたら…
……ちから……抜けた……」
胸に頭を埋めて聞こえた声に
見えない彼に静かに頷いた
今…声出したら、
きっと変な声しか
出そうになかったから……
バクバクの心臓音…
気付かれたくないけど
体を預けてくれるのを
離したくもなくて………
そっと包み込むように
背中に腕を回した
「本当に…良かった…
君の…カズの熱意に応えたい…って
それだけで受けたけどさ…
昨日も言ったけど、最近味覚鈍ってたから…」
また大きく息を吐いて
腕の中の体が小さく、震えた
「なぜ、急に戻ったんでしょうね…?」
「なんでだろ…わかんない…」
そっと背中に回された手に
また心臓が破裂するくらい早鐘を打ち始める
「と、とにかく…よ、かった…すね…」
誤魔化したくて出した声が変に上擦って
胸に埋まってた顔も上向いた
熱くなってる俺の顔を見るなり
なぜか大野さんの顔もほんのり…
色付きはじめて
「う、うん…よかった…」
鼻先が掠めるほどの距離で
お互い…視線を外せずに見つめ続けてたら