第28章 秋の夜長に春ひとつ
「はいよ、お待ち…」
「やった!いただきまーすっ」
雅紀の目の前に熱々ラーメンを置くと
勢いよく手を合わせて食べ始めた
いつもと変わらず
ノンストップで啜られていく麺
雅紀のこの食いっぷりは
いつ見ても気持ちいい
「…かずちゃん?」
「ん?なに…なんかおかしい?」
「いや、厨房の方見てたから
どうしたのかなーって」
気付けば雅紀を見てた目線が
厨房に向いていて
俺……
早く昼の時間過ぎねぇかな…って
考えてた
「厨房に誰かいるの?おばちゃん?」
「いや…それがさ、今ラーメンの再現に
大野さんに手伝ってもらってて…」
「え、大野さんってこの前の!?
良かったじゃん!
なら俺があれしなくても良かったかな…」
「…あれ?あれってなんだよ?」
「げほっ…んー…?な、なんだろねぇ…」
器用に食べながら話す雅紀は
明らかに戸惑ってるのに誤魔化し
またラーメンを啜り出す
…なんか企んでるのかもしれないけど、
今はそんなの…どうでもいいや…
追及してこない俺を不思議に見ながら
ものの5分ほどで完食した雅紀は
相も変わらず慌ただしく帰っていって
空のどんぶりを引き上げ厨房に戻ると
寸胴に集中してた大野さんの姿は
1つのどんぶりに視線を落としてた