第28章 秋の夜長に春ひとつ
じっと見つめてたら
唇がかすかに開いた瞬間
「…かずちゃん…?」
後ろから聞こえた声
振り返ると扉に寄りかかる人影
「お袋さん…!体大丈夫なの!?」
「今日はなんとか…ね。
あら?この人は…?」
「おばちゃん…久しぶり」
大野さんの声に
力なく歩いてくるお袋さんの
表情に光が指す
「え、さとちゃん…!?」
「そうだよ、久しぶりだね」
再会に夢中なのか
そのまま二人で話し込みだして
一人置いてけぼり状態のまま
…数分後
昔話を終えたお袋さんに
なぜここでいるのか、とか…
ことの経緯を説明すると
二つ返事で快諾してくれて
「…私の体が健康だったらね…
私もお手伝いしたいのだけれど…」
「いいよ、俺がやりたくてやらせて
もらってるようなものだし」
ものすごく申し訳なさそうにするお袋さん
久々に見たお袋さんは
かなり痩せていて…
親父さんが亡くなってから
どんどん…やつれてないか……?
もともとはふくよかな体型だったのに…
「そうだけど…」
「僕もいるから、大丈夫だよおばちゃん」
「大野さん…」
「…だよね?」
ふらりとふらつくお袋さんを支えて
柔らかくそう…促してくれたから
静かにうなずいた