第28章 秋の夜長に春ひとつ
「…あの……」
気持ちをはっきりと理解した
それからはもう
「…松本さんとは…どういう…?」
どんな反応されるか、とか…
ごちゃごちゃ考える前に訊ねていた
不意に出てきた言葉に
上がっていた口角が
一瞬にしてきゅっ…と
まっすぐになって
「…カズはどういう関係だと思ってるの?」
「恋人だと…思ってます」
しっかりと俺を見上げる真顔に
正直に言葉をぶつけた
さっき見てしまった光景
あれは…どう考えても、
ただの同僚との雰囲気じゃ…ない……
「元…だけどね」
真顔がふっと力が抜けて
そう言って立ち上がると
寸胴の前で立ち止まって
弱火でクツクツと沸くスープ
それをゆっくりとかき混ぜはじめた
「あの…なんで、元…なんです…?」
「…なんで君がそこ気にするの?
好奇心?!それなら……っ…」
「違います!その…っ…
信じてもらえないかも知れないけど!
俺…あなたのこと好きなんです!
最初はそんなこと思ってもなかったけど…
あなたの…笑顔が、素敵で…。
そ…の、えと…っ……
だから…教えてほしいだけでっ!」
少し荒ぶる大野さんの言葉に
今伝えられるありったけの
気持ちをぶつけると
鍋に落とされてた視線が
驚きの眼差しを向けてきた
すぐ驚きの目が探る目に変わって
ずっと見つめてくるのを反らさず
…見つめ続けた