第28章 秋の夜長に春ひとつ
共通の話題からの方がいいかな…
って小さく呟いて
ここの親父さんとの思い出を
のんびりと思い出しながら話してくれた
俺が生まれる前
大野さんが小学生の頃
この時知った年齢差に
驚いたのは言うまでもない…
だってベビーフェイスだし…
……………………ちっさいから
(言ったら怒られるかもだから黙っといたけど)
テレビで年齢とか言ってなかったし、
なんとなく…雰囲気で
3つくらい上かと思ってたのに
変に反応してしまった俺に
なに?って首を傾げるから
驚きを隠して
反れかけた話を戻した
親父さんとの思い出がまさかの
俺と同じで父さんに連れられてきて
ひと口食べてからここの虜…という共通点に
頭の上で小さい俺がガッツポーズした
だってさ…なんか共通点が多いと嬉しいじゃん?
その時の俺の表情がやけに面白かったのか
見たことない大きなのけ反り笑顔が
やけに…可愛くて。
料理人になったことも訊ねたら
また穏やかに話してくれた
「あれは…中1のころ?かな…
親父さんのラーメンの味が
変わったように感じたんだよね…」
言いにくいなと思いながら指摘したら
スープをアレンジしようとしてる最中で
その変化に気付いたことに
「その能力を生かせることを仕事にした方がいい」
と親父さんに声を大にして勧められたとか。
…うん、あの親父さんなら
半ば強引気味に言いそうだな…
「母ちゃんにカレー作ったりしてたし、
なりたい職業とか頭になかったから
それで料理人になろっかなって…」
「…大野さんのカレー…」
「…今晩、カレーにする?」
「それ、いい!」
ぽろりと溢れた言葉に
嬉しい言葉が返ってきて
俺の食いぎみの反応にまた
のけ反り笑いが飛び出して
胸の奥できゅんって…
大きく音をたてた
こんな無垢に笑う人…
親友の雅紀以外で初めてみた
社会人になってから
社畜のように働いてた数年間
見る人見る人、
表面上の取り繕うような笑顔ばっかりで
そんな感情一切湧かなかった
久々にとまどいながらも
胸の鼓動が徐々に高鳴っていく
これってさ…やっぱ、
『恋』…だよな…