第28章 秋の夜長に春ひとつ
きっと…さっき我慢してた涙が…
堪えていた、止めていたのが
溢れたんだよね…
腕の中の大野さんに
少しの愛しさを…感じながら
震える体をぎゅって抱き締め続けた
「…っ、く……っ…」
腕の中の大野さんはずっと
小さく震えてて
振り払われることもなく
腕の中でしばらく泣き続けてた
止まらない涙を擦り続けながら
散々泣いて
抑え気味にしてた泣き声が
聞こえなくなった時
前に回した腕に自然と力を込めた
「…落ち着き…ました……?」
「…ん……」
ごしごし、っとまた顔を拭って
小さく…深い息を吐いてから
さっきは我慢できたのにな、って
声が聞こえて
「松本さんの前では泣かなかったんすね…」
「!…見てたの…?」
「はい…すんません……」
戸惑いを見せた背中に小声で謝ると
お腹の前で重ねてた手に
そっ…と温かな手が重なると
大野さんは静かに語りだした