第28章 秋の夜長に春ひとつ
「…無理に笑ってるように…
見えるの…?」
か細い、感情を押さえつけた
抑揚のない声…
虚ろさしか宿さなくなった瞳…
張り付いてた穏やかな笑顔は
なりを潜めていて。
見たこともない表情、雰囲気に
踏み込んではいけないとこに
踏み込んでしまった
そんな後悔を心の奥底で感じたけど
頭で考えるよりも先に
出てしまった言葉は取り消せない
なんで俺…
あんなこと言ったんだ…
別に触れなくて良かったのに
スルーすれば良かったのに
なんで…
「はぁ~……」
どんな言葉も出てこない俺のかわりに
大きく息を吐く溜め息が聞こえて
綺麗に整えられてた髪が
ぐしゃぐしゃと乱れ
「……!」
俯いていく瞬間
頬に伝っていく雫が見えた
「…な、泣いてるんすか…」
俯く顔を覗こうとしたら
ぷいってそっぽ向かれて
震える背中を見てたら
顔をごしごし…力一杯擦り出す
「…っ、く…止ま…よぉ……」
小さく呟きながら
未だ擦り続けてる
小さな背中を
なぜだか、俺は
自然と包み込んでいた