第28章 秋の夜長に春ひとつ
どんな感想言ってくれるかな…
モヤモヤとドキドキを感じながら
見つめるレンゲを俺も見つめる
ゆっくりと口元に運ばれていくのを
片付けるものもないのに
片付けしているフリをしながら
チラチラ見てる…と
それがくぃっと緩やかに傾いた
口に含んで味わってる…
表情は無に近いほど変化がなくて
スープは旨いのか不味いのか…
どっちとも読めなくて……
なんにも言わないことに
また心臓がドキドキしてくる
うーん…やっぱりラーメン通とか…
…なのかな……
でも俺別にラーメン好きだけど
ここのラーメン屋以外、
行ったりしねぇしな……
じゃあどこで見たんだ…?
この人……
今度はしっかり男性を見つめると
目を閉じて長いこと味わってる…
実際に見たことないなら…
じゃあやっぱり、テレビで見た人…?
と思いながらまた男性を見つめてると
長かったスープの味わいのあと
箸で麺を持ち上げて
品定めするかのように今度は麺を凝視していて。
ラーメンウォーカーとかなら
食べ終わったら酷評とか…っ……
さっきまでの感じてたモヤモヤなんか忘れて
今ラーメンを見つめる
男性の麺を食べたあとの
第一声がなにか…
に気持ちが傾いてきた時
ずるるるるっ…
大きな啜る音を立てて
麺が吸い込まれていった