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台風のちに快晴、そして虹 【気象系BL】

第28章 秋の夜長に春ひとつ



お袋さんの悲しみを感じながら
店がなくなるかも、なんて思った瞬間

『俺が親父さんの味を継ぐ!』

そう口にして
翌日には退職願いを出して

有給休暇をうまく利用しながら
お袋さんの指導のもと

どうやっても、親父さんの味を残したい…

その一心で料理人としてのイロハとか
お店をやっていく上で必要なものは
一通り体に叩き込んで

親父さんが残してたノート通り
作ってるのに……

「なんで、なんだろう…」

1年経っても閑古鳥が鳴く
店内を1人見回して

レジ下の引き出しから
レシピノートを取り出して
何度も何度も頭に叩き込んだ材料、手順を反芻する

量も、味付けも、作り方も
間違ってないのに…

同じ味を表現できないもどかしさに
胸のあたりを掻きむしりたくなる

「くそっ…」

お袋さんに相談しても
レシピの内容については
ノート以上のことは
知らないって言ってたしな……

体を壊してるお袋さんに
心配かけたくないから
相談もしに行きにくいし…

「もう一回、見落としがないか…
見直すしか…ない、よな……」

親父さんの文字を見返そうと
ノートに視線を落としたとき

扉が開く乾いた音が聞こえた


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