第4章 嫉妬と好物と幸福と
「………ん…っ?」
何時間か寝ていたようだ
外の明かりが薄暗くなっていた
隣に視線を移すも、居るはずの智がそこには居なかった
無理矢理あんなことしたし、嫌になって帰ったのかな…
自分でしたことだというのに少し後悔していると
「あち!あっちゃーっ!」
どこからか智の声
慌てて声のした方へ向かうといい匂いがしてきた
たどり着いたのはキッチン
なぜか1人でコンロの前で格闘している智の姿がそこにあった
「えっ!かずっ?ちょ、来ちゃダメ…っ!」
智の言葉を無視して隣に立ちフライパンの中身を覗く
そこには…
「えっ?ハ、ハンバーグ…?」
俺の好物が美味そうに焼かれていた
「かずを驚かそうと思ってたのに…」
「え?もしかして…隠してたことって…これ?」
うん、と静かに頷く
「松潤に、美味しいハンバーグの作り方レクチャーしてもらってたの…で、内緒にして驚かせた方が喜ぶんじゃないって言われたから秘密にしてたのに…バレちゃった…」
少し拗ねたみたいな素振りをする智が無性に愛しくて抱きしめた
「かず…?」
「ごめん、そんなこととは俺思ってなくて…っ…」
「俺も嘘下手くそなのに、隠そうとして変に疑われることしてごめん…」
背中に回る智の両手が服を掴んでギュッと抱きしめ返してくる
「……怒ってないの、か…?」
「うん…俺も悪かったし…おあいこ、でしょ?」
俺の醜い嫉妬をこんな風に受け止めてくれるなんて
智が愛しい…
腕の中の温もりを感じていると優しく声掛けられる
「ね、ハンバーグ…食べてくれる?」
「もちろん…」
「良かった…」