第1章 カクテルに想いを乗せて
引かれるままタクシーに乗り込み着いたのは翔さんのマンション
さっと会計をして降りるとエレベーターで部屋へと向かう
「…どうぞ?」
促されて部屋へと入る
まさかこんな展開になるなんて思ってなかったけど、本当に良かったのだろうか…
通されたリビングで立ち尽くしているとキッチンから戻った翔さんの両手にはビールが握られていた
「飲む…?それか、もう…ベッド行く…?」
渡されたビールを手にしたまま大切なことを訊ねる
「あ、あのさ…翔さん?本当にいいの…?」
俺の言葉を聞きながらプルタブをあけグイッとビールを徐ろに煽ると
「俺……嬉しかったんだよ…ずっと、松潤のこと……好き、だったから……」
まさかの言葉が俺の鼓膜を刺激した
「え、ほ、ほんとに…?」
静かに頷きゆっくり俺との距離を縮めてくる
「松潤は…オトコに興味ないと思ってたから…ずっと気持ち隠してたんだけど…今日、言われてすごく嬉しかった…」
胸に感じる翔さんの温もり
「だから…松潤でいい、じゃなくて……松潤がいいんだよ…?」
その言葉が聞こえた後に唇に翔さんのそれが軽く触れて離れる
「好き…」
潤んだ瞳で少しはにかみさを含んだ笑顔に心が跳ねる
ベルベット・ハンマーはただ知らなかっただけだとこのとき確信した
翔さんが人の気持ち試したりするような人じゃないのはよく知ってるから…
「俺も…好きだよ…翔さん…」
ちゃんと言葉にして早く伝えていればよかった…
「翔、って呼んで…」
どちらからともなく目を閉じてキスを交わした