第26章 Rush around
「…うん……」
ゆっくり起き上がってきた体が
ふわっと、優しく俺を包み込んだ
「俺の長かった片想い分…
たくさん、思い出作って…」
柔らかく包み込んでた腕に力がこもってきて
これ、潤の気持ちと同じくらいの
強さ…なのかな…
あまりにも強い力
体に感じる痛みは
なぜか苦しいとかじゃなくて
むしろ、心地よくさえ感じてきて
こんなに近くに…
幸せを感じられる人がいたのに
やけに遠回り、しちゃったなぁ…
「ラブラブだね、2人」
ふふって笑いながら言うかずの声を聞きながら
そっと、俺も潤を抱きしめていた
「そうと決まれば!」
ガバッと体を離して、急に大きな声を上げた潤
「ど、どうした…っ?」
「今から!すぐに!思い出作りに行こう!」
力強く立ち上がると荷物を片手に、
もう片手に俺の手を握りしめて
「ちょ、潤…っ?」
「智、カズ!今度奢るからっ!」
俺の制止も響かず
個室の扉が開かれて
呆れ顔のような、
微笑ましく見つめてるような
そんな2人に軽く頭を下げて
潤に引っ張られるままに居酒屋を飛び出した
「どこ行くつもりだよっ?」
「俺!翔とデートしてぇってずっと思ってて!」
恋人繋ぎをした手を力強く引っ張られながら
商店街の中を突き進んでいく