第26章 Rush around
「…はぁ……」
意識を手放した雅紀をベッドに残したまま
少し熱くなった頭を冷やすように
冷たいシャワーを浴びる
こんなこと、しても虚しいだけ…
わかってても、ぶつけることのできない感情は
別のところで発散させずにはいられなくて…
中2から繰り返す
この抜けられない無限ループから
抜け出す方法、誰か教えてくれよ…
中学生の頃のおふざけでやった、
あの時の翔の顔がずっと…
消えて欲しくても消えない
坂本先輩から部活終わりに押し付けられた
エロDVDを翔と2人で鑑賞してたとき
すぐに真っ赤な顔に変わった翔が
俺を潤んだ目で見つめたときから
このメビウスの輪が生まれた
処理の一環、と言いくるめて
猛る翔のものを扱きながら正面から見た翔の顔は
今まで好きになったどんなやつよりも
綺麗で、可愛くて…
画面の向こうの
白々しい演技の女には
反応すらしなかった
オレが下着の中で反応した
けど親友ポジションを失うのが怖くて、
翔のを処理するだけして…
あれからずっと…
捕らえられたまま…
体も冷え切ってきた頃、
頭を雑に拭きながら
浴室からリビングに移動して
テーブルに置いたままの
ミネラルウォーターで喉を潤した
「いい加減…諦めないと、な……」
頬に伝った雫を拭うと
背中に感じる温かな体温
伸びてきた手が腹の前で交差して
「…雅紀?」
「なんか、寂しそうだったから…」
ギュッて回された腕に力が入る
この温もりでもいいかな…
温かくて、優しくて、心地いい
この腕の中に収まるのも
悪くねぇかもしれねぇ
そしたら、翔のこと…
忘れられるかな…
温もりに浸りながら
瞼裏に浮かぶ翔の笑顔がうっすら
霞んでいくように感じた