第26章 Rush around
- 松本 side -
「っ、ふぅ〜……」
事後の一服で漏れた一筋の煙は
感嘆と溜息が含まれてる、なんて
俺以外知るよしもねぇ、な
…なにセンチになってんだか、俺
たかが、翔に避けられてるってだけじゃねぇか…
「何、どうしたの…?」
煙を燻らすだけになった煙草が
斜め下から伸びてきた
綺麗な手に絡め取られて
上下が同じ薄さの綺麗な唇に引き寄せられる
先端がじわり、と赤い炎を煌めかせると
ふぅ…と一筋の綺麗な煙が
俺と今日だけの恋人の間を薄く、舞って消えた
「別に、なんでもねぇよ…」
煙が消えたあとに見えた、
寝転んだまま俺を見つめる瞳は
愛しの人とは違うことでまた、
現実を思い知らされる
冗談ぽく、言ったのも悪かったんだろうな…
俺の気持ちは本気なのに、
その気持ちは伝えずに
欲しがった俺への天罰か?
翔の恋愛対象に俺がハマってねぇってことくらい
こんな仕打ちしなくても、わかってるよ…
でも、俺は…
翔が…欲しくて欲しくて、
たまらないんだ………