第24章 愛し、愛され
グラスがまた赤い滝を作った時インターフォンが鳴る
「誰か来る予定あったの?」
「あったっけなぁ…?」
ニノに訊ねられて考える
特に思い当たらないけど…誰だろう?
空いたグラスをカウンターに置いてモニターへと移動する
離れたソファで翔くんも反応してたけど
2人にがっちり掴まれてて動けないまま
俺に助けを求めるようにチラリと見た
「俺行くから、いいよ…」
努めて普通に言ったはずの声は少し低かった
応答ボタンを押すと映ったのは…
「侑李と、菊池…?」
「え、知念も来たの?」
「…みたいだな」
一緒にモニターを見るニノと2人を迎えてリビングへと通した
「すみません、お邪魔しまーすっ」
「翔くん、お誕生日おめでとうございますっ」
菊池は入るなり、囲まれて動けない翔くんに一直線
2人に囲まれてたのが1人増えて
さらにソファから立ち上がれなくなってる
困ってるような、でも嬉しそうな表情で。
…もう、見るのやめよ
立ち尽くす侑李が不思議そうに俺を見つめるから
グラスを渡して空けてたワインを注ごうとすると
ニノが侑李にシャンパンを注いだ
「なんで、シャンパン?」
「知念にはこれくらいでいいんですよ」
「えー?僕もワインくらい嗜みますよ?」
「ソレは、だめなの」
…何がダメなんだ?
「潤くんが2人のために用意したやつだから、ですよ」
手元のラベルを見ると翔くんの生まれた年のワインで
マジックで『for mountain』と書いていた
『山へ』…これが俺と翔くんへ、ってことか
松潤の心配りに少しだけ。
イライラが減った気がする
「…お邪魔、でした?」
「いや?」
「じゃあなんでそんなに顔怖いんですか…?」
俺そんなに顔に出てるのか…?
「眉間にしわ寄ってます…」
「…ちょっと酔ってんのかもな」
全然酔ってないけどそう誤魔化して
空いたグラスに松潤の気持ちのそれを注ぐ
侑李のグラスと軽く合わせてクイッと軽く流し込んだ
せっかくのお祝いの集まりなんだ
切り替えないと、な…
「侑李、こっちにもツマミあるから来いよ」
「…はい♪」
切り替えようとは思うけど
やっぱりリビングのあの状態を見てるのは辛くて
冷蔵庫から取り出したチーズをカウンターに置いて
リビングに背を向ける形で侑李とニノと、
3人で談笑を始めた