第23章 君がいいんだ
「ん、ふ…」
唇の隙間から漏れる鼻にかかった甘い吐息
隣にいるのが当たり前になりつつあった君の
初めての反応に心臓の音がうるさくなる
胸元のスウェットを掴んでいた手が後頭部を掴む
《もぉ…っ…ばか…》
掻き抱いてきた手から流れ込んできた心の声
「…?ばか…?」
深く絡めていた唇を離すと間にひとつ、糸が引いた
濡れ光る唇をなぞると小さく震える
「ずっと…待ってたのに…雅紀さん、
手……全然出してこない…から…」
「…智くんが…
言ってくれるかな、って…」
「そ、そんなの!……」
《…恥ずかしいだろぉ…》
唇をなぞっていた手が横に逸れると頬に触れて
かなりの熱さにうるさい心臓の音が早まる
そっか、そうだよね…
智くんの性格なら待つ、よね
智くんから、なんて決めつけて。
僕はまた逃げてた
そういう雰囲気になった時も結局一歩引いて
君からの言葉がないのを理由にしてた
自分から行ってダメって言われたくなくて
他のことではぶつかったりできたのに…
「ごめんね、僕…また怖気ついてた」
「…うん、そうなのかなって…思ってた」
「不安に、させた…?」
「…ちょっとだけ」
《僕達、恋人じゃないのかなって…》
目頭から流れた一筋の涙を指で拭う
「違う…智くんは、僕の恋人だよ」
「じゃあ…ちゃんと、恋人に…して」
キツく抱きしめられた腕の中で囁かれた言葉に
不安なんて与えないくらい優しくする
そう思いながら深く深く、口付けた