第23章 君がいいんだ
「ただいま〜」
「雅紀さん、おかえり〜」
玄関を開けるとブルーのエプロンをした智くんが小走りに走ってきたから腕の中に閉じ込めた
夜風で冷え切った体温が少しずつ上がっていく
「ご飯すぐ出来るからね?」
優しく腕を解いて笑う智くんは1人キッチンへと向かっていく
生涯最高の誕生日のあと
高校を卒業した智くんと一緒に暮らし始めた
智くんが専門学校に通うことになって
今までのように会える時間を確保することが難しいってなって
おばさんに2人で頭を下げて始めた同棲も今年で2年目
智くん意外と頑固だから喧嘩したりするけど
僕たちはお互いを返品せずに仲良くやっていた
「あ、これ…」
「今年も買っておいたよ、チョコケーキ♡」
喉の渇きを潤そうと冷蔵庫を開けると
正方形の白い箱
忘れてた…
壁にあるカレンダーの今日のところには
赤のマーカーでハートが書いていて
今日はクリスマスイヴ、そして僕の誕生日…
日々の忙しさにすっかり忘れてた
朝から作ってたシチューの意味を知った僕はそれを温めてる君を後ろからハグした
「ど、どうしたの?」
「今日イヴって忘れてた…」
「だと思った…」
呆れるでもなく明るく返す智くんの
ボディーソープの香りのする体をムギュッと抱いて
耳にチュッてキスをすると
「お風呂入れてるから、入ってきてっ/////」
耳まで真っ赤に染まった智くんがちょっと早口なのが可愛くて
ニヤニヤしながら見る僕を智くんが力づくで脱衣所に押し込めた
可愛いんだから、もう…
にやつきながら服を脱ぎ捨てて
ローズの香りが微かにするバスタブに滑り込ませて
ほどよく体を温めてさっと洗って
智くんの元へと戻る
ダイニングテーブルにはたくさんの料理が並んでて
クリアなガラスにセットされたキャンドルが優しい光を放ってた
「ご飯にしよ?」
僕の姿を確認して
シャンパングラスに注がれた綺麗なゴールドに
きめ細やかな泡が絶えず立ち上る
グラスを手に取って
「お誕生日、おめでとう雅紀さん」
「ありがとう…」
僕たちはグラスを合わせた