第23章 君がいいんだ
感じてた温かな感触を離すと
うっすらと開いた瞳が輝くように綺麗で
見惚れてたらまた体が温かさに包まれる
背中を掴んだ手はもう震えていなかった
《嬉しくて…死にそう》
「ちょっとぉ…冗談でも死にそうとか
やめてよ〜…」
入院中気が気じゃなかったんだからぁ…
「んふふ…ごめんなさい…」
《でも、それくらい…幸せ》
ふわふわの柔らかな髪が首筋をくすぐる
体を擦り付ける愛しい人の温もりが
僕にも幸せを分けてくれて
「誕生日に、こうしていられるなんて…僕も幸せ」
漏れた言葉に急に温もりが離れる
「そうだよ!雅紀さんのお誕生日だった!
…お誕生日、おめでとう…」
輝く瞳に僕を映して柔らかく微笑んだ君は
また表情が曇る
「本当に、プレゼント僕でいいの…?」
「…もちろん」
「ほかに欲しいもの、ない?」
「…思いつかないよ」
「でもぉ…」
《僕だけ、なんて…》
本当、出会ってからずっと…
どんな時でも君は優しいね
人は人と共にしか生きていけない
そんなことわかってたけど踏み出せなかった
もう傷つきたくないからって遠ざけてたけど
どんなに自分が傷ついても
心腐らずに相手を思いやる君が
他人は醜いと決めつけて遠ざけてた僕に
踏み出すきっかけをくれた
そして、教えてくれた
僕が傷つくも傷つかないも
全部、僕次第なんだって
僕に大切なことを教えてくれた君が隣にいてくれたら
僕の特別な人でいてくれたら
…それだけで、いい
今、欲しいものは君という素敵な人だけ
「…君がいいんだ」
「…じゃあ…」
「……?!?」
《返品、不可で!!》
僕の本音をゆっくり噛みしめるように笑って
両手で頬をムギュッと挟まれて力強いキスをくれた
勢いのまま後ろに倒れてラグの上に体が横たわる
「絶対返品しないよ…」
見えたおでこにキスをすると
僕の胸元で智くんがふふふ、って笑いだして
僕もつられて笑った
「うひゃっ?」
《お前ら、何やってんだよ…》
いつの間にか戻ってきた雅が智くんの頬を舐めて
僕に触れると呆れた声がした
「邪魔すんなよ〜」
「んふふ…そだよ〜雅ぃ…」
僕たちを一瞥すると姿を消してまた2人きりになった
笑ってお互い抱きしめあって
生涯で最高に幸せな誕生日が過ぎていった