第23章 君がいいんだ
闇の暗さが深くなってきた時
背中を掴む手が緩んだ
「…大丈夫?」
俯いたまま頷いた智くんはさっきまで聞こえていた心の声まで押し黙ってしまっていて
僕、なんか悪いことしちゃったかな…
俯く顔が少し赤いように見えたから慌てて後ろに回って前進する
風邪ひいちゃうと大変…
少し早く歩いてアパートへと向かう中
沈黙に耐えかねて慌てて話題を振る
「そうだ!パーティー、しない?」
「パーティー…?」
少し明るさを含んだ返事にテンションが上がる
「そう!パーティー!
智くんの退院祝いと、誕生日祝いも兼ねて!
クリスマスパーティーも一緒にする?
チキン買って、ケーキも…
あ、ケーキ何が好き?
僕はね、チョコが一番好き!」
捲し立てるように話したのが功を奏したのか
小さいけど笑い声が返ってきて
「……僕も、チョコが好き」
表情は見えなかったけど
いつものように柔らかく笑ってるように感じた
同じものが好きでまたテンション上がって
「じゃ、チョコケーキ買って!
パーティーやろう!!」
「うん…じゃあ、プレゼントどうしよう?」
「…え?」
「クリスマスパーティーも兼ねてるなら、雅紀さんのお誕生日祝いも一緒でしょ…?プレゼント…何が欲しい?」
…こんな時まで、君は…
冷たくなった体に智くんの優しさが
温もりのように広がる
「…智くん」
「えっ?」
振り返り見上げる智くんは不思議そうにしていて
「君がいい」
おざなり気味の告白に
呆れた答えが返ってくるかと思ってたのに
「僕で、いいの…?」
震える声で答えをくれて、
僕を見つめる瞳はまた揺らぎだした
「僕も…雅紀さんがいい」
《ずっと、好きだった…》
ポロリと落ちた雫が伝う頬を撫でると聞こえた声
「え、本当に…?」
「うん…」
智くんは涙を拭うと微笑んで
「ずっと、ずっと。好き、だった…。
今年の初めに公園で見かけた時から、ずっと…」
言葉を詰まらせながらゆっくり気持ちを伝えてくれた
雅を連れて散歩していた僕を公園で見かけて一目惚れ
公園で僕を見るのがひとときの癒しで
2月に入ると毎日のように見かけてた僕を見かけなくなってしょんぼりしてたんだ、と…