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台風のちに快晴、そして虹 【気象系BL】

第23章 君がいいんだ




「お世話に、なりました」

肌寒い空気の中、
玄関口で看護師さんが見送ってくれる

「沢山食べて、体力つけてね?」
「はぁい〜」

智くんは以前と変わらない
優しい笑顔で挨拶をして

僕も軽く頭を下げると
ゆっくり車椅子を押した

「…あ」
「…雪だ」

道路に差し掛かった時
ちらちらと舞ってきた雪

夕闇に変わっていくと
街路樹の電飾がゆっくり点火した

色とりどりの明かりの中
光の道に沿って歩く

「もうすぐ、クリスマスかぁ…」
「…そうだね」
「ってことは、雅紀さんの誕生日も、だよね?」
「うん…そうだね」
「…雅紀さん?」

イルミネーションを見ていた智くんが
振り返り見上げる

「…どうしたの?元気…ないね」
「…ごめんね」

僕の言葉に首を傾げた智くんに
ずっと胸に痞えていたことを口にする

「アザのこと…僕がもっと、ちゃんと智くんに聞いたりしていれば、君がこんなことにならなかったかもしれないのに…ごめん…」

俯いて呟くとハンドルを握る僕の手がぎゅっと握られて

顔を上げると瞬きしない瞳に捉えられる

「謝らないで?僕は…それで救われていたから」
《父さんを責めるつもりなかったから…それで良かったんだ》

思いがけない心の声に戸惑う

「どういう、こと…?」
「父さん…僕にしかあたるところがなかったんだ」

前を向いた智くんは深く息を吐いて
経緯を話してくれた



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