第23章 君がいいんだ
「あっつぅ…」
夏休みも終盤
ジンワリ汗が出る暑い中
雅の部屋で智くんを待つ
「雅ぃ…智くんまだかなぁ?」
コンクリートと仲良くする雅を撫でると
少しだるそうな声で答えてくれた
《もうすぐ来るだろ〜…
雅紀が人を待つようになるとはね〜…》
「な、なんだよ…」
《……智に惚れた?》
「うぇっ!?」
《いてぇ〜っ!》
驚きから雅の毛を掴んで
力いっぱい引っ張ってしまった
《お前なぁ…っ》
「ごめんっ」
クルクルその場で回って
痛みを逃がそうとしてる雅を
一生懸命撫でる
「雅が急に変なこと言うからぁ…」
《だって、ほんとのことだろ?》
「そんなこと…」
《ないの?》
「……ある……けど。」
図星に語尾が少し小さくなった
バイト代も出ないここのこと
嫌な顔一つせずやってくれる智くん
みんなをお世話しながら浮かべる笑顔が
キラキラしてて可愛くて
たまに聞こえる心の声も
ただただ明るくて…
気付けば表面も内面も綺麗な智くんを目で追って
帰宅して1人になった時
その日の智くんを思い出しては
胸の奥がきゅぅってなった
人を愛しいと感じたのは何年振りだろう
脳裏にぱっと浮かんだ智くんの笑顔に
自然と顔がニヤけた
《告ればいいのに…》
「そんなに簡単に言わないでよっ」
《両想いだと思うぞ?》
「……えっ?」
おすわりする雅はチラッと僕の顔を見た
《昨日さ…智が言ったんだよ。
お前のこと見ながら
〝かっこいいなぁ…〟って》
それ、ホントにホントならかなり嬉しいけど…
「…さ、散歩行こっか」
《なんでそうなるんだよっ》
「じ、じ、時間だからだよっ」
《男なら当たって砕けろ!》
「く、砕けるのやだっ!」
《言葉のあやだよ!砕けねぇって!》
「それでもやだ!僕は今のままで幸せなのっ!」
《…後悔してもしらねぇからなっ》
僕を不満げに見上げる雅の頭を撫でて
リードを付けると散歩に連れ出した