第23章 君がいいんだ
「ここのお手伝い、したいんだけど…
いいですか?」
遠慮がちに言う言葉に
「ありがたいけど…」
「お礼が、したいんです」
断ろうとする僕の言葉に重ねてくる
どう断ろうかと考えようとした時
大人しくおすわりしてた
雅が智くんに飛びついた
智くんの腕の中にすっぽりおさまると
顔を舐め出す
「あ、こら…っ」
「ふは、くすぐったい…」
嫌がることなく受け入れる智くん
雅を可愛いと言いながら撫でる姿を
止めようとあげた手を下ろして
しばらく見つめていた
もう雅ったらどういうつもりだよ…
ひとしきり舐めたあと
智くんの胡座の間にちょこんとお座りして
くすくす笑っていた智くんが
こちらを見る
「雅は良いって言ってくれてるみたいだけど…
ダメですか?」
四つの瞳が縋るように
じっと見つめる
この状況でダメなんて言えるわけないじゃん〜…
「じゃあ…お願いします」
「やった!こちらこそ、よろしくお願いします!」
躊躇なく差し出された手
握手を求めるその手に
恐る恐る、触れた
《嬉しい…》
智くんの安堵を含んだような
柔らかくて温かい心の声に
よくわからない、
何かもやもやしたものを感じながら
細くて綺麗な手を握り返した
「あ、トイレ借りて…いいですか?」
奥の扉を指して
智くんが姿を消したのを確認して
雅をとっちめる
「なんであんなことしたんだよ、雅っ」
僕が人間苦手だって知ってるくせに…
なんで…
《いいじゃん、別に〜》
「よくないよ!僕は…1人でいいのにっ」
抱き上げてムギュッと強く抱きしめたら
《心配なんだっ!》
普段怒鳴ることのない雅の
大きな声に驚く
《1人で俺たちのこと
面倒見てくれてるのは感謝してる!
でも雅紀、痩せるほど疲れてるだろ…?
やりたいって言ってくれてるんだからさ…
甘えたっていいじゃん…》
「…雅」
…気付かれていたのか
《人間にも、いいやつはいる。
俺は、智はいいやつだと思うけど》
「…そんなの、わかんないよ」
信じて傷付くのは嫌なんだ…
《この!ひねくれヤロー!!》
「雅のお人好し!!」
《俺は犬ですぅ〜》
「ぐぅっ……揚げ足取るなぁ!」
頭に血が上って言い合いしてたら
ガタンと大きな音
「…え?か、会話…して、る……?」
振り向くと扉の前で立ち尽くしてる智くんがいた