第22章 お山夫婦の1日
- 櫻井 side -
引っ張られる糸との戦いに必死になっている智くんの顔がすぐそばにあってちょっとドキッとした
そのまま竿を握ったまましばらく見惚れていると
「翔くんっ!タモ!タモ取って!」
操縦室の壁に立て掛けてある網を指差されたから慌てて手を伸ばして渡すと大きな魚が引き揚げられた
「っいよっしゃ〜!釣れたぁっ!!」
「すげっ!でっかい!智くん、これなんて魚?」
「んー、大きさによってこれ名前違うんだけど……お、70センチくらいあるな〜これ、『ワカサ』だな」
掌を沿わせて魚の体長を計って教えてくれた
「ワカサ?初めて聞いた…」
「ブリの一個前のことだよ、ワカサが体長80センチ超えるとブリになるんだ」
「へぇ〜…さすが詳しいなぁ…」
感心していると操縦室から船長さんが出てきた
「おっ!ワカサ釣れたんすか!早速捌いて刺身にでもします?」
「うん、お願いしてもいい?」
釣れたワカサを船長さんに渡す智くんの顔は普段あまり見せない弾けるような笑顔で
さっき助けてくれた時よりも早くなる鼓動を感じていた
「良かったね、釣れて!」
「翔くんのおかげで釣れたよ、ありがとっ」
「いや、智くんが釣ったんじゃんw」
お互いを讃えあっていると捌かれたワカサの刺身が届く
それをみんなで堪能してから、再開した釣り
さらに数時間船上で魚と格闘した
その間智くんはいつも以上にテンション高くて
無邪気に笑う智くんを見てるだけで俺は今日という休みをとても有意義に過ごした