第22章 お山夫婦の1日
ー1時間後……ー
リールをひっきりなしに巻いたり、こまかくしゃくったりと色々試してみるが、今日はまだヒットすらない
今日は我慢の一日になるのかぁ?
チラリと翔くんを見ると
翔くんも感触がないみたいで
針を下ろしたまんまぼんやりしてる
せっかく釣りに来たのにボウズはやだなぁ…
ふーっと息を吐いて垂らしていた針を一旦あげると
「きたきたっ!智くん、助けてっ!力強くて、持ってかれそうっ!」
大きくしなる竿に振り回されそうになっている翔くん
慌てて後ろに回り、翔くんごと体の中に抱えて竿を握った
「こ、れは…っ!かなりの大物っ!」
アタリの強さに興奮して力一杯引くと
「マジでっ!?やった、どんな魚だろっ!」
俺以上に興奮して竿を必死に握ってこらえている翔くん
釣りを趣味にしているわけでもないのに、
今日俺に付き合って来てくれているのに、
こんな楽しそうにしてくれるなんて…
すっげー出来た俺の嫁っ!笑
必死に魚との戦いをしながらもそんなことを思っていると
一瞬、気が緩んだ瞬間に更に大きくしなった竿に引っ張られて船の上でバランスを崩しかけた
「うわっ!あぶなっ…」
「だ、大丈夫!?翔くん…っ、しっかり竿掴んで踏ん張って!も少し、あがるまでかかる…かもっ!」
踏ん張ってくれている翔くんに竿の支えを任せて俺はひたすら引かれる糸の動きに合わせてリールを巻いたり緩めたりと奮闘した