第19章 『あなたに夢中』
「まだ酔い冷めないからさ〜…足だけちょっと温めさせて?」
「ぁ、ああ…」
檜風呂のふちに腰掛けて膝上まで浴衣の裾を捲り上げると、ゆっくり足を湯に浸けてくる
俺は自然とカズと少し距離を取っていた
「なんで離れて行くのさ…」
少し唇を尖らせて俺を見下ろすカズは柔らかい月明かりを纏っていて綺麗で…
穢してはいけない、本能的にそう思う
カズの誕生日に告白してから付き合い始めたものの、俺たちはキス以上はまだで
…そうだ、思い出した。カズが2人きりで敬語を使ったのは、カズが俺にキス以上のことを強請ってきたとき…
俺がそれをやんわりと止めた……あの時だ
そういうコトが嫌いとかではない
好きな人とそういうコトをしたいと思う気持ちはもちろんある
でも…大事過ぎて、好きすぎて………ためらってしまう
俺が暴走してしまったら?
カズの意に反することまでしてしまったら?
そう考えれば考えるほど…俺はやんわり距離を取ってしまう
揺れる白濁の湯を見つめ顔にそれを掛けた時
「俺のこと、本当に好きなの…?」
カズの少し震える声が水音の後に聞こえた