第19章 『あなたに夢中』
「潤くん、潤くん……」
「ん、ん〜……?」
「着いたよ?」
穏やかに揺らされる振動でゆっくり意識が目覚めた
目に映った景色は真っ黒ではなくて、いつの間にかサングラスは外され、胸ポケットに入ってた
カズ越しに見る窓から見える景色はもう薄暗くなっていた
「ほら、行くから起きて?」
「ん〜…」
まだもやのかかった頭を軽く掻いて車を降りると街灯も少ない……
「山の、上……?」
「そ、ほら行くよ〜?」
僅かに明かりが灯っている方へと歩く後ろをついて行く
徐々に距離が縮まると見えて来た外観
「りょ、かん……?」
「そ♡今日、ここ泊まるから♪」
「ええっ!?」
俺の言葉には無反応で突き進んで行く
「お、おい…」
慌てて駆け足で扉をくぐると初老の女将さんが迎えてくれて
和室の部屋へと通してくれた
「は〜…やっとのんびりできる♪」
座椅子にどかっと座るカズの向かいに俺も腰を下ろした
な、なにがなんだかわからない…
「ね、カズ…ここ、予約してたの?」
「…うん、潤くんの誕生日2人っきりでお祝いしたかったからさ…ダメだった?」
幼顔で首傾げて言われてダメなんて言う男なんていねぇだろ…
「ありがと、カズ…」
「どういたしまして♡」