第18章 イケナイ教育
台風が近づいて来ている影響か、空に黒い雲が広がってきた
「智くん、早く帰ろっ」
2人少し小走りで来た道を戻って行く
自宅の玄関をくぐると少し雷の音が聞こえた
「…今日は天気が荒れそうだね」
「…うん……」
俺の言葉に少し元気なさそうな反応が返ってくる
俺、何か変なこと言ったかな…?
いや、もしかしたら帰ってくるまで智くんの口元ガン見してたの気持ち悪いとか思われたっ!?(汗)
どどどどうしよう…っ…
「さ、とし…くん?」
靴を脱ぎながら俯く智くんの顔を恐る恐る覗き込む
「…ん?なに?」
「あ、いや…なんか元気なさそうな気がした、から…」
シャープな顎に一雫、汗が滴る
「…ちょっと暑くてバテただけだから、へーき…」
ちょっと引き攣った笑顔が本当に苦しそう
「俺、全部入れておくからさ…智くんちょっと横になりなよ」
3つのスーパーの袋を持って先にキッチンへと足を運んで中身を冷蔵庫にしまっていく
全て綺麗にしまい終えるとリビングに目を向ける
智くんはソファの上で横になっていた
そっと近付き覗き込んでみると小さな寝息を立てて寝てる
天使のような穏やかな寝顔
それを屈んでジッと見つめる
…あ、睫毛長い…
無防備に眠る顔が可愛らしくて飽きもせずに見つめてると
さっきもガン見してた唇にまた釘付けになっちゃう
薄めの小さな唇が呼吸と共にうっすら開く
高鳴る鼓動に溢れてくる男の欲望
…ちょっと、だけ…
穏やかに眠る智くんに俺の影を落としてチョン、と触れるだけのキス
ファーストキスはレモン味、なんてよく言うけど強いて言うなら感じたのは…トマトソースの味だった
唇ってこんなに柔らかいんだ………もっと…したい
眠る智くんの顔の横に両手をついて、反応のない智くんの唇にもう一度触れる
触れては離して、を繰り返してると
「……うぅ…ん………」
体を捻った智くんが横向きになる
咄嗟に離れて、自分の部屋へと駆け上がった
…バレてない…よな
智くんに対する昂ぶる鼓動と、イケナイことしちゃったという背徳感の鼓動が入り混じって
心臓が口から出るんじゃないかと思うほど脈打つ
ベッドに潜り込んでその鼓動を治めようとすると、そのまま眠ってしまった