第18章 イケナイ教育
先にスタスタ歩いていく智くんの後をついていく
なんで俺よりちっちゃいのにそんな足早いんだよ…
無言で歩く智くんの背中を見ながら冷静になってさっきのやりとりを思い返す
あの事故は俺が生まれた年にあったんだから、智くんが俺より年下な訳ないや…
けど、目の前を歩く男は俺より背丈も肩幅も、何もかもちっちゃくて
Tシャツ半パン姿が余計にその幼さを助長してる
「翔く〜ん、スーパーどっち〜??」
幹線道路に差し掛かって、左右どちらに行けば良いのかわからずに立ち尽くしてる智くんに左側を指しながら駆け足で隣に並んだ
「何食べたい?俺、だいたいのもの作れるよ〜」
ふんふん、と軽い鼻歌混じりに聞いてくれる
「……餃子とか、作れたりする?」
「作れるよ〜?翔くん餃子好きなの?」
少し斜め下から俺を見上げる可愛らしいつぶらな瞳が陽射しを取り込んでキラキラ輝いてる
その綺麗な瞳に吸い込まれそうに、なる………
「す、好き…」
「へぇ〜…じゃあ今晩は餃子にしよっか〜」
餃子が好きか、と聞かれてるのに違う意味で捉えてしまった俺の言葉は震えた
…俺、智くんのこと…好きになっちゃった、みたいだ…
胸の奥が締め付けられて、少し息苦しささえ感じる
その胸を押さえて立ち尽くしていた俺
「翔く〜ん、早く〜」
立ち止まっていた俺を一足早く着いた智くんが手を振って呼ぶとそのまま自動ドアをくぐって行く
…ど、どうしよう…智くんとどう接すれば…
考えがまとまらないままゆっくり俺もスーパーへと入った
戸惑い、混乱する俺をよそに智くんは3日分の食料をあれやこれやとカゴに放り込んでいってる
結局、買い物が終わるまで俺は智くんと一定の距離を保ったまま付いて回るしか出来なかった
「翔くん〜……袋に入れるの手伝って?」
「あ、は、はい…」
少し前屈みになって食材を詰めていくその姿の横に立つ
チラリと目線を横にやれば、長めのサラサラの髪が重力のままに前に流れてうなじが露わになる
腕とかから見える肌よりもそこはさらに白くて…
「ん?生唾飲んだ…?翔くん腹減り過ぎたんか?」
「あ、うん…早く飯食べたいな〜…って」
心の動揺を誤魔化して只管袋に食材を詰めた