第18章 イケナイ教育
「…え、なに…どうしたの?」
階段を降りきったとこで2人がボストンバッグを持って立っていて、不思議に思ってそう訊ねた
「私たち、今日から3日間新婚旅行に行ってくるから♡」
「「ええっ!!」」
智くんも聞いてなかったのか一緒に驚く
「じゃ、3日分の食費入れた封筒置いてあるから、それで適当にしてね♡今晩あたり台風上陸するから戸締まりきっちりしてね!お土産買ってくるわね、行ってきまーすっ」
「すまないね、2人とも…行ってくるよ〜…」
言いたいこと言うだけ言って、明るい顔をした母さんと少し申し訳なさそうな顔をした義父さんが姿を消していった
もう既に今、この家を台風が通り過ぎていったよ…
少し気疲れを感じたけど、あれだけ嬉しそうにしてる母さんを見れたのならまぁいいか
「……母ちゃん、いつもあんなんなんか?」
隣で呆然としてた智くんが少し口元を引きつらせた顔でこちらを向きながらそう呟いた
「…ま、まぁ…だいたいあんな感じ」
「そか、明るくて面白い母ちゃんだなっ」
呆れてたわけではなく、ただ驚いていただけのようでニカッと笑う
柔らかく笑う穏やかな笑顔もいいけど、この顔もいいな…
って、だから俺はなにを考えてんだ!(汗)
ぶんぶん、と頭を振って変な感情を消そうとする
「どしたの、翔くん?」
「いや、なんでもない…」
いきなり3日もこんな変な感情のまま智くんと2人きりとか…俺、大丈夫かな…
「なぁ、食費いくら置いてってくれたのか見よ〜」
俺の気をよそに、のほほんとしてる智くん
彼の背中を少し恨めしく見ながら後を追ってリビングに向かう
智くんはテーブルの上の封筒を手に取って覗いていた
「いくら入ってる?」
「…3万……多すぎだろ、これ」
店屋物取ってもそんなにいらねぇぞ…
「母ちゃん太っ腹だなぁ〜…じゃ、買い物行こっか?」
「え?デリバリーとかでいいんじゃない?」
「ダメだよ、そーゆーのばっか食べるとすぐ太るし、体に悪いよ?」
「でも、俺…麦茶しか作れない…」
「俺が作るよ、俺料理得意だし」
封筒をヒラヒラ振りながら玄関へと向かって行く智くん
「ちょっと、スーパーとかどこにあるか知らないでしょっ?」
追いついて2人で自宅を出た