第14章 『最愛』
- 二宮 side -
もうすぐ、今やってるドラマが終わる
今までにない役で、この仕事が決まった時は本当に心が弾んだというのに人の命を救う人を演じる、と決まった後に知った叔母の死
本当に気持ちの整理が難しかった
でも、大好きだった人を失った喪失感でいっぱいだった心を奮い立たせてくれたのも叔母で
人の命の大切さ、尊さを俺に教えてくれた叔母に、恥じない仕事をしてみせる
そう心に誓ってやっていた
奮い立たせた気持ちの勢いのまま、駆け抜けてやっていたそれも、ようやく……
気付けば、安堵の溜息をついていた
「……どうか、したの?」
ここが楽屋ということも忘れていた俺がついた溜息に反応した潤くん
1番…聞かれたくもあり、聞かれたくなかった、人……
人一倍、気を使う彼はいつも優しくて
どういう類(たぐい)の溜息すらも聞き逃さず寄り添えるなら寄り添おうとする
…今も、そうだ
優しい彼の、そんな所が好きで
好きで
好きで
俺だけに向けられた優しさじゃないとわかっていても惹かれていく気持ちは止められなくて
ひと時の優しさに甘えて苦しい心の内を吐き出した
俺の気持ちを知った潤くんからの言葉に我慢していた涙がぽたり、と落ちた後
抱きしめられたその腕の中で驚きで心臓が止まるかと思った
俺だから、じゃない…ここにいたのが俺じゃなくても潤くんはこうしていただろう
でも、嬉しくてつい
「人の温もり、ってさ…安心する、よね」
そうこぼした俺に両腕を広げた彼の優しさに甘えて今度は自分からその胸の中に体を預けた
ホント…温もり、って心を落ち着かせてくれる
心は落ち着くけど、脈は早くて
潤くんの鼓動も早く感じたけど、気のせい……かな
楽屋の扉が音を立てるまで、静寂な部屋で温もりに体を預けて幸せを噛み締めていた