第12章 自由で、天然で、でも………
「……ごめん、雅紀…俺…」
「ううん、俺が悪かったから…謝らないで?」
そう言ったあと、
それ以上はもうすんだこと、と言うかのように
車内は静まり返っていた
その静寂な空間は、重苦しい空気とかではなくて
お互いもう何も言わずとも分かり合えたから話す必要がないと俺は感じていた
しばらくして着いた雅紀のマンション
車から降りていつものように玄関に向かおうとした時、急に塞がれた視界
「え、雅紀っ?」
「家入るまで、しばらくそうしてて?」
すぐそばで話す雅紀の声に今俺の視界を塞いでいるのは雅紀の手のようで
そのまま言われた通り、背中に感じる雅紀に任せて移動していく
なんだろ……もしかして、サプライズか何か、かな……
色々考えながらでいるとあっという間に玄関前に着いたみたいで
キーロック解除の音がして中へ入るように促されて入る
ただ促されるままに進んでいくといつもの感覚だとリビングの扉が開く音がして
パチッとスイッチを押す音と同時に外された雅紀の手
ようやく暗闇から解放された俺の目に映ったものは
黄色と緑色の風船がリビング一面に敷き詰められていて……
壁には可愛らしい手作りの飾り付け
「ハッピーバースデー…かず」
思いがけないことに立ち尽くす俺を優しく後ろから抱きしめながらとびきり甘くて優しい声で囁かれた
「これ……雅紀1人で準備したの…?」
「うん、風船膨らましてたらさ〜…後半酸欠になっちゃってw途中からはあのシュコシュコするやつ?で膨らませたwww」
すぐ近くにあるキャビネットの上にあるそれを指差してまたぎゅう、と抱きしめられる
「かずの誕生日当日にお祝いできる、ってなったらさ…何かしたくなって…」
やばい、嬉しすぎる…
「……かず?え、もしかして嫌だった?」
ふるふると顔を横に振って意思表示をする
嬉しさでこみ上げてきた涙を堪えるのに必死で言葉を発することができない
それに痺れを切らした雅紀に覗き込まれた俺の表情は
「……か、かず…」
「バカ雅紀…っ…今顔見んなよぉ…」
さっき雅紀がしていたようにくしゃくしゃになってるに違いなかった