第12章 自由で、天然で、でも………
『もしもし…おーちゃん?』
なぜか雅紀の声が俺の耳にも届いて
驚いて顔を上げるとスピーカー設定にされたまま電話が繋がっていた
それを確認した俺をリーダーが見やると
「…どうしたの?相葉ちゃん」
何も知らない、という体(てい)で雅紀にそう訊ねていた
俺のために、そうしてくれてるのかな…
クッションをぎゅっと抱き抱えて様子を伺う
『……かず、知らない…かな』
物凄く気落ちしたような元気のない声
それに胸の奥がぎゅう、と締め付けられる感覚
「なんで?何か、あったの…?」
『……俺ね、かずに謝りたいんだ』
「ケンカでも、したの?」
『ケンカって言うか……なんていうか…』
心なしか、声……震えてる?
まだ動向を見ていたくて黙って声を拾うことに集中する
『俺、今日かずの誕生日で浮かれてたからさ…っ…いつも以上に、テンションおかしくなっちゃって…』
「うん」
『楽しい話して、かずを楽しませようって思いながら話してたんだけど…そうしてたらさ…かずが怒って店出て行っちゃって…』
「……うん」
『俺なんでかずが怒ってるかわかんなくて…松潤に相談したら、むちゃくちゃ怒られた……』
「怒られたの?松潤に??」
『うん…〝恋人の誕生日に、恋人と会話しないなんて怒られて当然〟って…』
スマホの向こうからグス、と鼻をすする音が聞こえてリーダーが俺に目配せをした
その目は〝どうしたい?〟って俺に訊ねてくれてるようだったけど
なぜか俺はなんにもリアクションが取れなくて
ただぼんやりとリーダーと、リーダーの手にあるスマホを見つめていた
「……ニノの携帯は?鳴らしたの?」
さっき俺が拒否した意図をわかってくれていたのかそう訊ねたリーダー
『それが……電源落ちてるみたいで…』
その声にテーブルの上にうつ伏せになっていた俺のスマホを手にとって画面を見ると
ホームボタンを押しても光を放たず、ただ真っ暗で
真っ暗なそこには少し眉の下がった俺の顔がうっすらと映っていた