第9章 逢いたくて…
そう、ポツリと呟いた時
「まぁ〜さき?」
リビングに繋がるドアが開いたかと思うと大好きな彼が俺の目の前まで近付いてきた
「しょ、翔ちゃんっ?なんでっ?」
「予定より早く終わったから速攻で帰ってきたんだよ」
目の前の彼が穏やかに微笑みながらゆっくり両手を広げる
「おかえりのハグは?」
「…っ!」
言葉を発する前にその開かれた腕の中へと飛び込んだ
「お、おか…っ……おかえりっ……」
「ただいま、雅紀…」
優しく撫でてくれる手
体全体で感じる翔ちゃんの体温
それだけで寂しかった気持ちが全部吹き飛んだ
「雅紀…寂しかった?」
「当たり前でしょっ…」
「俺も寂しかったよ…やっと、雅紀のこと抱きしめられた…」
「…っ、ぐす…っ…逢いたくて仕方なかったよ…翔ちゃん……」
「泣くなよぉ…」
俺の頬を伝う涙を優しく拭ってくれる
ぁあ…本当に翔ちゃんだぁ…
真面目な顔して涙を拭う翔ちゃんの柔らかい唇に勢いよく自分のを重ね……
「っ、ぶっ!」
「………〜…っ!」
…重ねたと思ったのに
実際は勢いよすぎて正面衝突して顔をぶつけ合ったみたいになっちゃった
「…いてぇ…(泣)」
顔を抑えてしゃがみこんじゃう翔ちゃん
怒ってはいないみたいで肩を揺らして少し笑い出した
「ふふ、ふは、はははっ…」
「ごめん、翔ちゃん…っ」
「もぉ〜っ…キスは、こうだろ…?」
そう言ってすっく、と立ち上がったかと思うと腰に回ってきた手
優しく抱き寄せられると少し斜めに傾いた顔がゆっくり近づいてきて…
数日ぶりの優しいキスをくれた