第9章 逢いたくて…
- 櫻井 side -
驚かせようと帰ってきたことを黙って自宅で出迎えると案の定、ぽかんと呆気にとられた雅紀の顔
雅紀の顔を見て俺の逢いたかった気持ちを伝えようと腕を広げると勢いよく飛び込んできた愛しの人
感じる温もりに、大変だった仕事の疲れなんてなかったかのようだ
寂しがり屋の雅紀が嬉しさからか泣き始めた
溢れる雫を指で拭っていると何を思ったか急に近づいてきた顔
キスだとわかったけど反応しきれなくてなぜか正面衝突した
普通に痛くてしゃがみこんだけど、すぐに込み上げた可笑しさ
〝寂しかった〟とか〝逢いたかった〟とか
色んな気持ちが現れてした行動だとわかったから嬉しくて笑いが零れた
こういう予想外の行動をするとこも…雅紀なりに一生懸命ってよくわかるから…好きだ
空振りで終わったキスを俺からしたら、反応できなかった雅紀は目を開けたまま俺のキスを受けた
離れると久しぶりだからかお互い照れて見つめ合う
「目、閉じろやっw」
「きゅ、急だったからぁ…っ」
「じゃ、もう一回、な…」
「うん…」
今度はお互い、ゆっくり目を閉じてちゃんとしたキスを交わす
すっ、と掠めるだけだったけど
「…幸せ……」
気づいたらそう、呟いていた
「俺もだよ…翔ちゃんがそばにいてくれるだけで、幸せ…」
「……そばにいるだけでいい?」
そばにいるだけで幸せだけどそれ以上に雅紀を近くに感じて幸せをもっと噛み締めたい
俺の気持ちが伝わったみたいで肩に頬を埋めて体を擦り寄せて
「翔ちゃんが…欲しい…」
欲しかったその言葉を聞いた後、2人とも自然と寝室へと向かった