第9章 逢いたくて…
- 櫻井 side -
今日からしばらく日本を離れる
俺の恋人、雅紀はとても寂しがりやで毎回、1人で行く今回のような長期取材の時は素直に寂しいとわかりやすいほどに態度で表す
それ自体は可愛らしいし、とても嬉しいことなんだけどそれだけにはとどまらず、こちらも寂しい気持ちになる
「翔ちゃん…」
「なんて顔してんだよ…もう…」
国際線のロビーで俺を切なげに見つめるその瞳にさらに感じる寂しさ
それを振り切るように少しおどける
「すぐ帰ってくるからさ?ほら、笑えって〜」
「ちょっ、や、やめてよ翔ちゃんっ…」
「ほらほらっ、笑って?」
「も、わかった!わかったからくすぐらないでっ…」
寂しさを堪えて軽く微笑む雅紀
愛しくて抱きしめようと手を伸ばそうとした時、搭乗を促すアナウンスが流れる
「あ、もう…行かなきゃ」
伸ばした手を降ろすと再び眉を寄せて悲しそうな表情をする目の前の雅紀
「雅紀の好きそうなスイーツ、買ってくるね」
「そんなの、無くていいから早く帰ってきて…」
一瞬にして飛び込んできた身体を受け止めて優しく抱きしめ返す
「うん、なるべく…早く帰るよ」
俺の服を掴む手が震えている
寂しいのに、我慢させてごめん…俺だって寂しいんだよ…?
背中を優しくさするとふっと離れる体温
「いってらっしゃい、電話は必ずしてね!」
元気に手を振って姿を消して行くのを見送ると搭乗ゲートへと足を進めた