第4章 カケラの眩しさ
万「これで、よし。結局、俺も愛聖には甘くなっちゃうな···これじゃあ、千のこと言えないじゃないか」
ため息混じりの万理の声と、ドアに近付いてくる足音。
ドアノブがカチャリと回され少し開けられた扉越しに目が合ってしまった。
万「わ···びっくりした」
『あ、あのね万理!』
そのまま謝ろうとすれば、パタンとドアが閉じられた。
『万理』
万「愛聖はもう、寝たかなぁ···?なんて···」
···私?
万「さっき先に寝ててって言ったから、きっともう寝てるよね?」
···いや、起きてますけど。
しかも今、お互いに目が合ったよね??
『えっと···万理?』
開けようとしても開かないドアに向かって、小さく呼びかけてみる。
万「きっと寝てるよね?···ちょっと確認してみよう、かな?···お~い、愛聖はもう寝ましたかぁ?」
···なんの確認なの、これ。
万「良い子はお利口さんに寝ましたかぁ?」
お、お利口さんって、また子供扱いしてる?!
万「寝たかなぁ···どう?寝た?」
だから、なんの確認···まぁ、いいか···
『お利口さんの愛聖は···寝たよ?』
何度も何度も繰り返してくる万理を不思議に思いながらも、そう返してみた。
万「どうやら愛聖はちゃんと寝たようだね···じゃ···よっこいしょ、っと。今夜は特別に、ひとりレッスンでもしようかな?なんて···」
ガサゴソと音がして、万理がドアに背中を預けて座る気配がした。
ひとりレッスンって、今までそんなのしてたことない···よね?
どうして急に?
そう思ってドアノブを回しても、万理が寄りかかっているせいでドアを開けることは出来なかった。
万「おや?愛聖は寝てるはずなのに···誰だろう?もしかして寂しがりで甘えん坊の···猫さんかな?」
万理はどうしても、私が寝てるって事にしておきたいんだね···
仕方ないなぁ、もぅ。
『こ、こんばんにゃー···迷子の猫さんです』
万「···プッ、ククッ···」
わ、笑った?!
ヤバい···自分でやっといてメチャクチャ恥ずかしい!!
万「こんばんは、迷子の猫さん。今日は特別なゲストとして、大人しく···そこにいてね?」
特別なゲスト?
『わ、かったにゃん···』