第15章 shine of the palm
百「歌うことに必要な基礎体力のトレーニングはオレが担当したけど、マリーは元々ちゃんと体力作りしてたからお腹ぽよぽよなんかじゃなかったよ?出るとこ出てる、って感じで」
千「出るとこ出てるって、やっぱり・・・お腹?」
『ちがーう!』
クスクスと笑う千に向けて叫べば、今度はスタッフさんまでも含めた大きな笑いが起きた。
『まぁ、でも・・・Re:valeの2人には感謝してます、よ?忙しい時間の中でいろいろとご指導頂いたから』
それは、本当の気持ち。
スケジュールが上手く取れない時は、千の家でのレッスンとかだったし。
・・・殆どのレッスンがそれだけど。
百「マリーが曲出すってのは、レッスンに関わったオレたちは前から知ってた事だけどさ。それに伴ったライヴとかはしないの?」
『今のところ、そういう予定はありません。っていうか、私なんかがそんなイベントしたら、真面目に頑張ってるアーティストさんたちに睨まれちゃうから』
千「そう?そんなことはないんじゃない?」
いや、あるからね。
だいたい、女優業がメインなのに曲を出すってだけでも私にはハードルも壁も高いんだから。
千「でも、もしライヴやりまーすとかになったら、僕は108本のバラの花束を抱えてお祝いに行くよ」
『なんで108本?!それ普通にプロポーズする人が用意する花束!』
百「え?!そうなの?!じゃあオレもユキみたいにバラの花束持っていくよ!」
『だからなんで?!』
「「 さぁ、どっちを選ぶ? 」」
まるで花束を差し出しているかのように千も百ちゃんも両手を伸ばし、微笑みを浮かべながら私に体を向ける。
それを見届けるかのように静まり返るお客さんたちも、前のめり気味に目をキラキラとさせていた。
まったく・・・2人ともしょうもないんだから。
でも、この流れからしたら・・・私も乗っかるしかないよね?
だったら、とりあえず。
『・・・ごめんなさい。私には心に決めた人がいるんです』
深々と頭を下げて、どちらの花束も受け取らない姿勢を見せた。
「「 フラれた!! 」」
息ぴったりの嘆きの叫びにまた笑いが渦巻いたところで、小刻みに肩を震わせたスタッフさんがカンペを向け収録の終わりを告げた。